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踊る猫の生活

創作のような日常/日常のような創作

アンドリュー・ヘイ『さざなみ』

アンドリュー・ヘイ『さざなみ』。一度目。ネタを割る。ちなみに二度観た。 

さざなみ [DVD]

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地味な良作……以上のものが伝わらない。「45 年間」という中途半端な時間に記念式を挙げることになった老夫婦の物語なのだけれど、夫に結婚まで考えた元カノが居るということを妻が知り嫉妬に悩むというスジ自体には新しさはない。だがその心理を丁寧に描いているところは好感が持てる。

ヒステリックに夫婦喧嘩を描くことも出来たはずだが、そうしなかったのは監督の意図に依るものなのだろう。それが成功していることを認めるに吝かではない。ただ、その地味さをどう評価するかが問題だろう。私は「物足りない」と思ってしまった。最後の最後に妻にひと言語らせれば良かったのではないか……と考えて、いや最後に妻が夫の手を離したことが全てを物語っているのではないかとも考えてしまった。その地味さ、手堅さ(見事な構成!)、それ自体は「買い」だと思う。

陰影に富んだ映像自体は美しい。原色が使われているわけではないので色彩美は期待出来ないが、その地味さ自体もこの映画と釣り合っているように思われる。魅入ってしまうほどのものではないが、程良くロングショットやその他の技法を使っているところも監督の工夫を感じる。これもまた「好みの問題」なのではないか。

「水」に対するこだわりが気になった(その意味では邦題は良いタイトルだ)。川辺の光景、そもそも元カノが氷漬けの中で発見されたという設定も、湖面を背景に撮られたスライド写真の映像も、地球温暖化で氷が溶けて行くという話題もそのこだわりに色を加えている。これもまた監督の計算の産物なのだろう。これに関しては他の作品も観てみたいところ。あまり高く評価出来なかったが、愚作とかそういう意味ではない。地味ながら良く出来た映画だと思う。こちらが勝手に物足りないと思ってしまっただけであるので、気にしないでご覧になっていただきたい。