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踊る猫の生活

創作のような日常/日常のような創作

鹿の糞

日常のような創作
Return of the Rentals

Return of the Rentals

 

ぶう屁衛さんから聞かせていただいた話。具体的にいつ起きた話なのかまでは教えていただけなかったのだけれど(ぶう屁衛さんの年齢がバレるので)、ぶう屁衛さんが子どもの頃の話だとだけ語っておこう。

「修学旅行に行って来た友達がマヌケなやつでした。一緒に奈良に行ったんですけどね。そこで鹿の糞を手に入れたんです」

普通奈良で売られているのは鹿の糞に見立てたお菓子である。ところがその彼はなにを思ったか、ホンマモンの鹿の糞を「ウンがつくから」という理由で拾ったのだそうだ。

「バカですねー。で、それは良いんだけれど『折角だからお前にも売ってやるよ』って誘われて、そいつがまた腕っ節の強いやつで……ガキ大将ってやつですね。逆らえなかったんです」

押し問答の末に百円くらいで十粒買ったのだという。

「でもそんなもん使い道なんてないですよね? まあ確かに『ウンがつく』ってことでお守りとして持っておけば縁起が良いのかどうかは知りませんが、不潔でしょう」

散々迷った挙句結局捨てたのだという。学校の裏庭に捨てたのだそうだ。

「自分ちに捨てるのもなんだか汚いなと思ったんです」

それで暫くはその鹿の糞のことも忘れてしまったようだ。だが、ある日裏庭を見てみたら二本の棒が五センチほど地面に刺さっていた。

「いや、明らかに地面からにょきっと生えてるって感じでしたね。根本が太くて。両方ともふたつに枝分かれしてました」

それでしげしげと観察してみる。白くて表面がデコボコした、先端は丸っこいものだったという。そう太くはなかったのだそうだ。手に握れるくらい。

「突っついてみてもびくともしないんです。で、変な話もあるもんだと思ってそのまま放っておいたんですけれど、暫くしたら」

棒は伸びていた。長さにして十センチはあったのではないか、という。成長する木の苗だったのかなと思ったらしいが、一体なんの木なのか。棒自体には葉っぱも特についていない。

「下品な喩えですが、子どものおっきしたおちんちんが生えているような感じで立ってました」

根っこから掘り出すのも面倒臭い。それで、それ以上興味も沸かなくてそのまま放っておいたそうだ。

「最後に見た時は十五センチくらいまで伸びてたかな……地面も心なしか盛り上がっているようで。ハッキリと見なかったですけれど、なんかこんもりしてました。で、ある日」

その棒があった場所がぽっかり穴が空いていたのだという。誰かが掘り返したように。穴の周囲には土が乱雑に散らかっていた。

「てっきり邪魔になったから先生が根っこごと抜いたのかな、と思ったんです」

でも誰の仕業なのかは分からない。もしも抜いたのなら穴を元に戻すはずだ。不届き者の仕業に違いない。

「すぐさま全校挙げて『犯人探し』になりました。悪質な悪戯だ、と。結局犯人は見つからなかったけれど」

問題はその後。

「それから、妙に『学校近辺に野生の鹿が現れた』って目撃談が絶えなかったですね。最後に車に轢かれて死んでいるのが確認されたんです。考えてみれば穴の大きさは動物が一匹入るくらいの大きさだったんですけれど……あの鹿の糞はなんだったんですかね?」

まさか「種」だった、なんてこともあるんですかね……そう言ってぶう屁衛さんは笑った。