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踊る猫の生活

創作のような日常/日常のような創作

古本

日常のような創作
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お話を聞かせていただくお礼にと思って古本屋で買って読んだ割りとコンディションの悪くない大西巨人編『日本掌編小説秀作選』上下巻を手渡すと、「もう持ってますけど、いただいておきます」と虛宮皇志郎さんは仰られてそれを受け取った。そんな虛宮さんから聞かせていただいた話。

スーパー源氏とか日本の古本屋とか……そういうネットの古本屋で掘り出し物を見つけることがあるんですよ。あとはあまり使わないですけれど Amazon とかブックオフオンラインとか駿河屋とか」

そこまではありがちな話。でも、衝動買いしてしまう私と違って虛宮さんは金銭感覚がしっかりしているので、そういう物件に安直に手を伸ばすことは控えているのだという。

「そういう本って、基本折り目がついていたりするんですよ。それはまあ安売りされているものだからっていうので許せますけど、蛍光ペンでラインが引かれてたりするんですよね。私はそういう本ってあまり好きじゃないんですよ」

本が汚いからと言うのももちろんあるのだけれど……。

「なんか、前に読んだ人間の思考が垣間見えるようで、むしろそっちの方がウザいですね。こう読め! って指示されているようで」

著者を罵倒する落書きが書かれたものを買ってしまいゲンナリしたこともあるという。

「あるいはエッチな場面がべっとり貼りついている本とか、表紙を剥がしてみると妙な呪文が血文字で書かれている本とか……リアル古本屋で買う分にはそんなこと事前に分かりますよね。手に取って確かめられるわけですから。だから買うのは慎重派なんです。でも、たまに掘り出し物があるとつい手を伸ばしそうになって……最近は鷲巣繁男とかああいうのを狙ってるんですけど」

私は更に話を聞いた。すると友達の話をして下さった。

「彼の話だと、『ヤケあり』って本を買ったことがあるそうです。ヤフオクだったかな……で、届いてみると本のカヴァーの皮が茶色になっていて。普通なら日焼けすると色が薄れますよね? 不思議に思ったらしいですけれど、まあ値段相応の品物だからしょうがないかと思って手に取ったら」

焼けたセピア色の皮が薄く剥がれたという。そしてピンク色の肌が現れた。

「そういう『日焼け』かよ! って……それで出品者に連絡してみるも返事は案の定梨の礫。近所のお寺に持って行って焼いて貰ったら肉の焦げる匂いがしたそうです。まあ恐ろしく陳腐な話なんですけれど、今回は聞いた話を『そのまま』お伝えするという約束ですので」

それ以上ディープな話はないか、と私が訪ねたところ……。

「うーん、あとは私の話じゃないですけれど投げ売りされていたかなりコンディションの悪かった『吉岡実全詩集』を古本屋で手にしたら結構錆びたような茶色い染みがついていて、それは良いけれど表面が茶色い物質が苔のようにへばりついていてデコボコしているから触ってみたら」

ペロリ、とカヴァーにこびりついていたその苔のようなものが剥がれ落ちた。

「それで、新しいカヴァーの色が現れた、と。瘡蓋ってやつなんでしょうね。特に欲しいとも思えなくなったのでそのまま買わずに帰ったらしいです。私がお話し出来るのはこれくらいですね」