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踊る猫の生活

創作のような日常/日常のような創作

立ち小便

caldera

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今回はやや下品な話になる。相互フォロワーの昭乃そらさんから聞いた話。彼女の男友達の話だ。彼が仕事も終わり飲みニケーションの席で同僚と愚痴を零し合い、したたかに酔っ払ったその帰り道に起こった出来事だった。

「下品な話題なんですけれど……その友達が、尿意を催したんだそうです」

だが、近隣にトイレはない。公園やコンビニと言ったものが見当たらない。それで彼は、酔っ払った勢いで立ち小便をしてしまえと思ったのだそうだ。

「酔ってたから理性的な考えが回らなかったんでしょうね。真夜中で誰も通らない裏路地を歩いていたから、っていうのもあるのかも」

その彼はふと、視界に一本の電柱があるのを見た。

「男の人の心理ってどういうものなのかな……どうせなら電柱に向かっておしっこをしようって思ったらしいんです」

その心理なら私も分かるような気がする。別役実のエッセイにも立ち小便は電柱に向かってやるからこそ醍醐味があるのだ、と書かれていたのを読んだような記憶があるので(確か『日々の暮し方』で)。それで、電柱目掛けて彼はイチモツを差し出した。だが、位置が定まらない。

「彼曰く、本当に酔っ払ってたから……身体がフラフラしていたこともあって。それで、しゃんと姿勢を正して電柱に向けて、男の人のアレを差し出したんです」

ところが、位置を定めて電柱目掛けてイチモツを差し出したはずが、どうしても位置がズレてしまう。幾ら正確にポジションを定めても、電柱が横にズレて行く。

「それで、彼も一歩横に動いたらしいんですね。それで改めておしっこしようって……それで、やっと身体を安定させてアレを向けて」

それでも電柱は横に動く。位置を幾ら正確に定めても、電柱にイチモツが向かない。一歩、また一歩と横にズレて行く。尿意は既に限界に達している。だが、電柱が横に逸れて行く。どうしたことだろう。

そうやって一歩また一歩とよたよた歩いて、随分移動して……やっと位置が定まった。そこで、さあ小便をしようと決意したところ背後から「君はなにをやってるんだね」と言われたそうだ。

「おまわりさんだったそうです」

警官のその言葉にビックリして、彼は自分が交番の真ん前に立っていることに気づいた。酔いが醒めてしまう。あるはずの電柱もなくなっている。

「それで、交番のトイレを貸して貰うことになったらしいんです。もちろんキツくお灸を据えられたそうです……良い大人がなにをやってるんだ、立ち小便は犯罪になるんだよ、って散々絞られたと」

その現象の原因は分かっていない。誰に話しても、酔っ払ってたからそんなドジを踏んだんだろうと返されたのだという。

「彼は、物の怪の仕業だとか言ってるんだけれど……タヌキに化かされたとかそういう類の。僕は電柱がおしっこを嫌って逃げたのかなあと思って聞いたんですけれど……こんな話で良かったら使ってくれても良いですよ」

そう言って、昭乃さんは私が奢ったモスバーガーのチーズバーガーを齧った。