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踊る猫の生活

創作のような日常/日常のような創作

たい焼き

日常のような創作
CI (ボーナストラック2曲収録)

CI (ボーナストラック2曲収録)

 

正月に初詣に行った時の話。酒を止めて以来甘いものが好きになってしまった。それでたい焼きを屋台で半ダース買ったのだけれど、その内の一匹がまだ生きていた。バタバタと身体を震わせて紙袋の中で暴れている。

それでそのたい焼きを食べるのがなんだか可哀想になってしまったので、飼育することにした。とは言えたい焼きを飼ったことはない。ネットで調べてみたら好事家の書いているブログ記事にぶち当たった。その方がたい焼きの飼育をしているという。記事を読んでみた。たい焼きは水溶性なので水の中に入れるのは禁物だという。なるほどな、と思った。

そういうわけでたい焼きを飼育するのにちょうど良い大きさのポシェットを買い、その中にたい焼きを入れて持ち歩くことにした。餌はそのブログの筆者に依ればゆで卵の黄身や小麦粉が良いらしい。なので私は毎朝ゆで卵を作り、たい焼きに食わせてやることにした。

ところが、ある日のこと。私が外出先の洋式トイレで用を済ませていると、物の弾みでポシェットからたい焼きが落ちてしまった。それでたい焼きは水の中で苦しそうにしている。残念だが、毎朝ゆで卵を作るのも億劫になって来ていたので水に溶けるがままに任せようと思いそのまま流してしまった。どうせ大した売価で買ったものではないのだから、特に惜しいとは思わなかった。

それで暫くたい焼きのことは忘れていたのだけれど、地元の新聞を読んでいたら片隅に異常事態が発生したと書かれていた。なんでも野生のたい焼きが大量に発生し、揖保川を埋め尽くさんばかりに泳いでいるのだという。

私は早速 YouTube でその様子を眺めてみた。なるほど、黒沢清アカルイミライ』のクラゲばりに大量発生している。私は近所の川へ行った。たい焼きの群れは私の住んでいる上流にも遡行しているらしい。その様子を見ながら、私は何故たい焼きを水に流しては行けないのか、その本当の理由が分かったような気がした。

野生のたい焼きを食べてみたのだけれど、生では生臭くて到底食えたものではない。それで三枚に卸して皮を剥いで火を通してブラックバスのようにして食べてみたのだけれど、ブラックバスよりも泥臭かった。野生のたい焼きは不味い。それが年始に私が得られた教訓だった。